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きらめくメルヘン『春の窓』

 

この美しい物語にぴったりの言葉は、童話でもファンタジーでもなくメルヘン。
今日のカフェボンボンは、児童文学作家の安房直子(あわなおこ)の短篇傑作集です。

20130107

春の窓
著者:安房直子
出版社:講談社

思春期の頃、憧れや不安でいっぱいな心を温かくしてくれたのは、やっぱりこんなメルヘンでした。

たとえば「あるジャム屋の話」。人づきあいの苦手な若者が、森の中の小屋でジャム作りを始めるのですが、ジャムは一向に売れません。絶望しかけた若者のもとを訪れたのは意外にも……。黙々とジャムを作る若者のさびしさをやさしく包み込む、詩のような物語がじんと心に響きます。

ひとりぼっちのクマの物話「北風のわすれたハンカチ」は、本当にせつない。「さびしくて、胸の中がぞくぞくするよ」体はおとなだけど、心はまだ少し子どものクマのつぶやきです。

本書の「朝時間」は、カニから届いた白い巻貝。耳に当てると、朝露のこぼれるような、ギターの音色が聞こえてきます。

本のお供には、「あるジャム屋の話」にちなんで、ロシア紅茶を。いちごジャムをティーカップにひとさじ入れて……。

人の心にすっと入り込み、希望の光をともしてくれる12のメルヘン。人生に訪れる幸福の瞬間を照らす光は、ランプのようにポッと明るく輝いて、いつまでも温かい。

以前ご紹介した『ひぐれのラッパ』もおすすめです。

Love, まっこリ〜ナ

 

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小説から絵本まで、編集者が選ぶ”朝読書”におすすめの1冊
Written by

まっこリ〜ナ

編集者・ライター

出版社勤務を経てフリーランスに。図鑑や写真集、子どもの本や雑誌などの編集に携わる。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。いちばん好きな本の主人公は長くつ下のピッピ。
趣味は草花園芸、編み物、ランニング、スポーツ観戦。

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